中国で大ヒットした许巍(Xu Wei)の曲、「生活不止眼前的苟且(目の前のことに追われて生きるだけが人生じゃない)」には、「あなたが徒手空拳で生まれてきたのは、生き抜かなければならない海を探すため」という歌詞が出てきます。
初代iPhoneも同じような状況に置かれていたと言えるかも知れません。市場にはすでにノキアやサムスン、ソニーといった強力なライバルがしっかりとシェアを占有していましたし、iOSはすべてのユーザーにとって受け入れるのに時間がかかりました。
結果的にアップルは、スマートフォン業界でも幾多の困難を退けて文字どおり頂点に立ちましたが、iPhoneが登場する過程で現れた、強力なライバルたちは歴史からその名を忘れられています。一体iPhoneの登場初期、市場にはどんなスマートフォンが存在したのでしょうか。
サムスン「Jet S8000」
トップバッターは、思い切り正面からiPhoneを狙い撃ちしたような形状を持つ、サムスンの「Jet S8000」です。
2009年の時点で有機EL(AMOLED)ディスプレイを搭載、CPUは800MHzと、スペック面ではiPhone3GSを圧倒していました。誰もが今回はサムスンがiPhoneに逆襲する番だ……と思いましたが、「Jet S8000」が発表された後に登場したiPhone3GSは、たった3日で100万台を売り上げる大記録を達成。完膚なきまでにアップルに叩きのめされる結果となってしまいました。
Palm「Palm Pre」
2009年に発売された「Palm Pre」も、やはりiPhoneを超えると一度は大きく期待された端末です。スライド式で、QWERTYキーボードを配備、Palm独自のWebOSを搭載と、発表された当時はユーザーも絶賛していました。
ただ残念なことに、いくら「Palm Pre」自体が優れていても、やはりiPhoneで得られる新体験にかなうことはありませんでした。物理キーボードのないディスプレイだけのiPhoneは、それほどまでに革命的でした。Palmはその後、2010年にヒューレット・パッカードに買収され、webOS事業も2011年に閉鎖されています。
ノキア「N97」
ノキアの歴史は1865年にまで遡ります。1995年には携帯ブランドとして黄金期を迎えましたが、iPhoneが登場すると急速にシェアを縮め、最終的にはマイクロソフトに買収される形でスマートフォン事業から撤退(久々に今年、ノキアブランドのモデルが復活しましたが)。最近ではノキア会長ですら、iPhoneを使っていることが暴露されているような状況です。
2009年に発売された「N97」は、王者による最後の咆哮と呼べるべき端末だったのかもしれません。上述した「Palm Pre」と同様、QWERTYを採用し、ディスプレイは3.5インチと、当時としては申し分のない内容でしたが、歴史の歯車は逆回転しないことを証明付けるかのように、結局ノキアの没落を救うには至りませんでした。
「機能が凄い端末」が勝つわけではない
こうして振り返ってみると、スペックで対抗しようとも、物理キーボードで対抗しようとも、結局iPhoneの趨勢を押しとどめることは出来なかったことがよく分かります。
革新的なデザイン、一度使ったら離れられないユーザーインターフェイスとユーザーエクスペリエンス、充実したプラットフォーム、そして緻密なブランド・マーケティング、これらがアップルを唯一無二の存在に押し上げたのだと、改めて実感せずにはいられませんね。
Source:MyDrivers
(kihachi)