Appleは業績が低迷していた約20年前、「Apple Cafe」の開店を計画していたことが分かりました。デザインは全く違いますが、発想は現在のApple Storeに通じるものです。
テーマパークから飛び出したような「Apple Store」
スティーブ・ジョブズ氏がAppleに復帰する前年にあたる1996年、iMacもiPodもなかった頃、「Apple Cafe」のプロジェクトは開始されました。
「Apple Cafe」は、まるでテーマパークか映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part2」から飛び出したような外観と、全テーブルにタッチスクリーン式のApple製コンピュータが配置された、90年代的な「未来」感あふれる店内が特徴です。
店内ではディスプレイで料理を注文して食事ができるほか、ビデオチャットやビデオゲームができ、Apple製コンピュータの販売やサポートを行うことが計画されていました。
最初、Appleは自分たちが何がしたいのかも分からなかった
Appleが1998年にiMacを発売する前で、インターネットが発展途上だった当時としては画期的な店舗の計画は極秘のうちに進められました。
「Apple Cafe」のデザインに半年の月日を費やしたという、デザイナーのトニー・クリストファー氏は、当時のことをこう語ります。
彼ら(Apple)は最初、自分たちが何をしたいのかもよく分かっていなかった。彼らが、私の考えたカフェというアイデアを持っていたのかも分からない。20年も前だからね!
彼らは「何がしたいのかよく分からないんだが、お客様とつながれる方法を探している」と言うので、「Apple Cafeを作ろう」という考えに至ったんだ。サイバーカフェ自体が存在しなかった頃の、世界最初のサイバーカフェだ。
当時、コンピュータを持っていない多くの人が、コンピュータを触りに行ける場所というアイデアは、1998年当時、斬新なものだった!
ディズニーでアトラクション演出の経験を持つトニー・クリストファー氏はその後、Landmark Entertainmentを創業し、ユニバーサル・スタジオを含む世界各地のテーマパーク・アトラクションや、ラスベガスの豪華ホテルの内装などを手掛けています。東京のサンリオ・ピューロランドもLandmark Entertainmentの作品です。
「Apple Cafe」計画を気に入ったが保留にしたジョブズ氏
スティーブ・ジョブズ氏は、「Apple Cafe」の全容を知り、気に入りましたが、計画は保留されました。
クリストファー氏はジョブズ氏と会ったことはありませんでしたが、「ジョブズ氏はApple Storeの計画を持っていた」と語ります。
そして2001年、世界最初のApple Storeが開店しました。外観も内装もシンプルなデザインは、「Apple Cafe」とはかけ離れていますし、食事や飲み物も提供されません。
しかし、Apple Storeは、ユーザーがAppleのスタッフと対話し、iPhoneやMacに自由に触れ、サポートを受けることができる、単なる「販売店」とは違う場所として、世界各地で490店舗が親しまれています。
Source:Fast Company
Photo:Landmark Entertainment
(hato)