「iPhone8」にAR(拡張現実)機能が搭載される、との噂に現実味を増す情報です。Appleが大規模な専門家集団を編成してARの研究開発に取り組んでおり、AR技術が間もなくiPhoneに導入される、とBloombergが伝えています。
AR関係の研究開発は、iPhone用と、先に報じられた眼鏡型のウェアラブル・デバイスがともに進められているようですが、先に製品化されるのはiPhoneとなるようです。
DolbyやOculus、HoloLens、ハリウッドから引き抜いた専門家
Appleの事情に詳しい匿名の情報筋の話としてBloombergは、AppleがAR関連の研究開発のため、ハードウェアとソフトウェアの両方をカバーする専門家のチームを編成していると報じています。これは、Appleが1,000名規模の技術者をAR研究に取り組ませている、と報じられた情報と一致します。
チームは、音響技術のDolby Laboratoriesの元役員マイク・ロックウェル氏が率い、VR(仮想現実)ヘッドセットのOculusやHoloLensの技術者、ハリウッドのデジタル効果の専門家ら外部から引き抜いた技術者が、iPhoneのカメラ開発陣とともに研究開発に取り組んでいるとのことです。
さらに、Appleは近年、MetaioやFlyBy MediaといったAR関連技術に強い企業をはじめ、VR、3Dゲーム関連の企業を複数買収しています。
iPhoneのカメラチームも研究開発に取り組む
iPhone用のAR関連技術の開発には、iPhoneのカメラ開発チームを含む数百名規模の技術者が従事している、と情報筋は語っています。
現在、写真撮影後、写真全体または特定の被写体の被写界深度を変更する機能や、人物の頭のような特定の被写体を画像から切り出して180度回転させる機能などの研究が進められている模様です。
iPhoneのカメラで被写界深度を認識する技術には、2013年に買収したPrimeSenseが開発したアルゴリズムが活用されています。
課題の多いAR眼鏡の製品化はしばらく先?
iPhoneにARを搭載するのと比べると、AR眼鏡の開発は困難で、製品化はしばらく先になるだろう、とBloombergは報じています。
AR眼鏡に3D映像を送るような負荷のかかる処理は、iPhoneのバッテリーを消費し、バッテリー駆動時間の問題が生じます。
また、AR眼鏡には専用のOSあるいは専用チップのための投資が必要となる一方で、マスマーケット向けに低価格で販売する必要があるうえ、魅力的なアプリやコンテンツが揃わないと売れないリスクも伴います。
Apple Watchが期待ほど売れていないことや、Google Glassが消費者向け製品としては失敗に終わったことを踏まえると、ウェアラブル・デバイスは難しい市場です。
現在までに世に出ているAR眼鏡は、小型で能力不足か、大型で高性能かのどちらかで、高性能と小型軽量の両立を得意とするAppleが、次世代のAR眼鏡を開発する上で克服すべき課題と考えられます。
Apple関連情報で知られる著名アナリストのジーン・ミュンスター氏は、ARで成功するための条件として、ハードウェアだけでなく「地図やソーシャル、支払いなど」のソフトウェアも重要だと指摘し、「その両方ができるのはAppleしかない」と語っています。
Source:Bloomberg
Photo:Gabor Balogh
(hato)