ティム・クック氏がAppleの最高経営責任者(CEO)に就任してからの6年間で、Appleの新製品発表から発売までの期間が、スティーブ・ジョブズCEO時代と比べて2倍に伸びている、と米紙Wall Street Journalが分析しています。
新製品発売が延期されることの増えたApple
Appleは、HomePodを2017年6月に発表した際は、12月に発売予定と予告していましたが、11月中旬に「2018年初頭」へと延期しました。結果として、AIスピーカーが注目された2017年のホリデーシーズン、Appleは、AmazonやGoogleに置き去りにされてしまいました。
このほか、AirPods、初代Apple Watch、Apple PencilやSmart Keyboardといった製品の発売が、当初の発表よりも遅れています。
新製品「発表」と「発売」の間隔、ジョブズ時代の2倍に
発売が延期される場合だけでなく、Appleによる新製品発表から実際の発売までの期間の平均は、ティム・クックCEO時代の最近6年間では23日ですが、その前スティーブ・ジョブズCEO時代の6年間では11日で、約2倍に伸びている、とWall Street Journalが指摘しています。
発表から発売までの期間が長くなることは、ライバルに反撃の時間を与えるほか、顧客が待ち時間に飽きてしまい販売機会を逃すことにも繋がり、好ましいことではなく、以前のAppleはこの期間を短くする努力をしていました。
70の新製品中、発表から出荷までが3カ月以上空くのが5製品も
Wall Street Journalによると、iPhoneやApple TVといった特別な製品を除き、新製品の出荷準備が整ってから発表していたジョブズ氏と比べて、クックCEOは、新製品と発売予定日を早く発表する傾向があるそうです。
Appleは、クック氏がCEOに就任してから、アップデートも含めると70以上の新製品を発表しています。そのうち、5製品が発表から出荷まで3カ月以上開いており、9製品は1カ月以上3カ月未満の間が空いているそうです。
一方、ジョブズ氏のCEO時代もほぼ同数の新製品が発表されていますが、3カ月以上開いたのは1製品のみで、1カ月以上3カ月未満が7製品でした。
新製品発売遅れの原因は3つ
新製品発売の遅れは、以下3つの要因によるものだ、とWall Street Journalは指摘しています。
1:巨大化したApple製品のユーザーベース
Apple製品は現在、世界で約11億台が使用されていると推定され、2013年時点の約4億台から3倍弱に増えています。
この巨大化したユーザーベースが、世界各地の市場へと配送する輸送体制や、大量の需要に応じる製造体制構築の足かせになっている可能性があります。
2:複雑化した製品
また、最近のApple製品が複雑化しているのも遅れの要因とされています。例えばAirPodsは、耳に入ったことを検知するためのレーザーの複雑さが製造遅れの原因になったと言われています。
iPhone Xも、TrueDepthカメラの複雑さが製造の遅れの原因になったと考えられます。
3:細分化したサプライヤー
さらに、最近のAppleはサプライヤーを細分化しており、以前のiPhoneのカメラならサプライヤーからカメラモジュールを買ってくるだけだったのが、現在はレンズ、センサー、そして接着剤までも別サプライヤーから供給を受けています。
サプライヤーを細分化することで、互いに競わせてコストを引き下げられるほか、出来合いのモジュールを使うよりもライバル製品との差別化がしやすいメリットがあるものの、それだけ調整に手間がかかり、供給上のボトルネックになるリスクも高まります。
Source:The Wall Street Journal
(hato)