中国のスマートフォン市場が飽和状態となってきたことが、調査会社IDCのレポートより明らかとなりました。2015年第1四半期において、出荷台数は4.3%減少し、9,880万台に留まりました。すでに中国国内のユーザーが用いている携帯の90%以上がスマートフォンであり、洗濯機や炊飯器と同様、スマートフォンが日常生活のなかでとって欠かせないものとなった今、過去のような高い需要は望めないのかも知れません。これを受けて、今後中国のスマートフォン市場はどうなるのか、米メディアのLA Timesが3つの可能性を挙げています。
1.アップル製品がステータス・シンボルとなる
先月発表されたIDCのレポートによれば、アップルは出荷台数でXiaomiを抜き、中国国内でシェア・トップに踊り出ました。一体アップルは、なぜここまで成功したのでしょうか。
もちろん、iPhone6シリーズが他社に対抗出来るほどの大画面であったことも理由ですが、バーバリーからAngela Ahrendts氏を引き抜き、ファッション雑誌VogueにApple Watchを装着したモデルを掲載するなど、ブランド戦略に力を入れていることが、大きな理由ではないか、と中国の高級マーケットに詳しいLiz Flora氏は分析します。
「アップルは中国において高級ブランドとして受け止められている。中国では、ブランド・ステータスは機能性と同じくらい重要なものだ」と彼女は述べています。スマートフォン市場が飽和しても、ブランド力のある製品であれば、他社製品からの乗り換えが見込めるため、アップルは打撃を受けないだろう、というのが彼女の見方です。
「中国では、アップルは他のスマートフォンと別枠の存在だ。人々はアップルのスマートフォンをただ自分のために買うのではなく、贈り物の選択肢としても捉えている。政府が推し進めている反腐敗運動によって高級ブランドの贈呈は衰退傾向にあるが、ブランドものの電化製品を送ることは、ルイ・ヴィトンやエルメスといったような伝統的な高級ブランドとは、違った意趣として受け止められている」
2.ハイエンド・モデルの競争が激しくなる
アップルの隆盛によって、他ベンダーは、単にプレミアム・モデルを作ればいいのではない、と気づく羽目になりました。しかし、サムスンのGalaxy S6シリーズのように、プラスチックを排しメタルボディーで高級感溢れるハイエンド・モデルを製造しても、なかなか功を奏しないのが実情です。
アップルが出荷台数ベースで62%の増加を遂げた一方、サムスンは同期間で53%の減少を起こし、中国国内でのシェアは第4位にまで下落してしまいました。
また、Xiaomiもアップルに抜かれたとはいえ、Mi NoteやMi Note Proといったハイエンド・モデルを発表するなど、格安スマートフォンメーカーからのイメージ脱却を図っています。
3.ブランド力が強くないベンダーは新たな道を模索
シェア・ランキングにおいてアップルに首位の座を明け渡してしまったものの、Xiaomiも依然として強力な存在であることには違いありません。2015年の第1四半期では出荷台数ベースで42%の増加に成功していますし、中国に留まらずインドやマレーシアといった近隣の新興国にもローエンド~ミッドエンド・モデルを積極的に展開しています。こういった傾向は、CoolpadやLenovoなど、中国の格安スマートフォンメーカーに共通している点です。
とはいえ、上述のLA Timesによると、2010年から2014年の間で、中国国内におけるスマートフォンの価格は平均して半値以下にまで下落しているそうです。同期間中アメリカでは25%の減少だったことを考えると、価格競争がいかに熾烈かが分かります。もはや価格がユーザーに対する訴求力をそこまで持っていないことが明らかとなった今、中国ベンダー各社も新たな方向に舵を切る必要性が出てきたということでしょうね。
Source:LA Times、http://iphone-mania.jp/news-73637/
Photo:Business Insider,OCTOBA,Technopat
(kihachi)