株価に関心のある投資家から、生粋のアップルファンまで、2015年初頭に発売予定のApple Watchが、皆の注目を集めていることは言うまでもありません。
それが単に新しいガジェットだからでしょうか。もちろんそれも理由の一つですが、やはり一番の理由では、Apple Watchがヒットすべき宿命を背負っていると願ってやまない人達や業界がいるからです。誇張抜きに、Apple Watchは新たなビリオネアを産み出したり、人々の生活を大きく変えるポテンシャルを持っているのです。
どうしてそこまで言い切れるのか、7つの理由を以下に挙げてみました。
1.ティム・クック氏初の大イベントである
長らくオペレーションチーフを務めてきたティム・クック氏は、iPhoneやiPadを通してテクノロジー界のトップにアップルが君臨するまで、社の大きな助けとなってきました。しかし、これらは皆スティーブ・ジョブズ氏の管理下で行われたものであることは否めません。
Apple Watchはティム・クック氏のアップルが創りだす初めての大掛かりな製品です。ですから当然、仮にApple Watchがコケることになれば、ティム・クック氏のマネジメント能力にも疑問符が付いてしまいます。カリスマを失ったアップルとしては、何としてでも避けたい事態でしょう。
2.アップルの次への起爆剤になり得る
成功を大きく収めたどの企業にも言えることですが、アップルの凄まじい成長ペースもさすがに速度を緩めてきました。それは過去最高益を出す一方で、iPodやiPad、iPhoneと言った革命的なヒット商品が出てこなかったからとも言えます。ですから、Apple Watchが仮に成功すれば、次への加速装置になることは間違いありません。
もちろん一晩で起きることは無いでしょう。なぜならアップルは既に余りにも巨大だからです。もし、アップルが1,000万個のApple Watchを2015年に平均500ドルで売ったとしても、50億ドルという売上はアップルが現在10日で稼ぎだしてしまう額なのです。
3.どこでも見かけそう
アップルの巧みなマーケティング戦略によって、ハリウッドのセレブたちからApple Watchが新たなアイコンとして迎え入れられることは間違いありません。テレビやビルボード、雑誌、アカデミー賞のレッドカーペット、ランウェイでモデルが装着している光景を想像してみて下さい。これはもうガジェットの域を超えた一つのスタイルなのです。
4.ウェアラブルデバイスの突破口となり得る
モルガンスタンレーの調査によれば、現在6%の人間がサムスンのスマートウォッチやナイキのフィットネストラッカーなど、何らかのウェアラブルデバイスを既に所有しています。しかし周囲を見渡しても分かるように、どれも爆発的なヒットをみせるには至っていません。ソニーやグーグル、そしてアップルといった、未だ姿を見せぬ巨人達が放つ製品への関心が強いことが調査から分かっています。
また他の予測では、ウェアラブル市場の拡張スピードはスマートフォンやタブレットの時よりも速いものとなるのではないかと予想されています。先述したモルガンスタンレーによれば、2015年には7,000万個のウェアラブルデバイスの発送が世界中で行われますが、僅か2年後の2017年には2億4,800万個に達する見込みです。
これは、ウェアラブルデバイスが、ファッションやフィットネスといったごく日常的な分野から、医療や保険といった高度な分野に至るまで、1兆6,000万ドル分の消費に関わってくるとされているからです。
さらにセンサー、デジタルアイデンティティ、モバイル決済、自己管理ツール、腕を振るとドアロックが解除されるような仕掛けに至るまで、あらゆる可能性をウェアラブルデバイスは秘めています。2020年にはインターネット関連への消費が7兆円にも上ると予想されています。Apple Watchによって、アップルがその中心に居座る可能性はかなり高いでしょう。
5.あなたをリッチにするかも知れない
手首につけるタイプの端末は様々な可能性を秘めています。これは間違いなくApple Watchアプリの開発者にとっては一大ビジネスチャンスです。何人かは起業してビジリオネアになるでしょうし、既に資金を豊富に有している人たちは今のうちから囲い込みを始めるかも知れません。キラキラと輝くウォッチバンドからワイヤレス・イヤホンのアドオンに至るまで、巨万の富を生むアクセサリービジネスへの大きな契機となることは間違いありません。
6.時計業界に火をつける
スマートフォンの販売台数と同じ数、12億個の時計が毎年生産されています。中国の成金趣味のおかげで息を吹き返したように見える高級スイスブランドから、カシオ、セイコー、スウォッチなどの中級ブランドまで、350ドルから数千ドルの時計を販売する様々な企業達にとって、Apple Watchは脅威でしかありません。
モルガンスタンレーの調査によれば、時計は最もApple Watchの影響を受けるデバイスの一つとなっています。興味深いことに、調査に参加した中国の回答者達ですら、スウォッチよりもアップルを選ぶと答えています。これに時計業界が慌てているのは明らかで、タグホイヤーが自前のスマートウォッチを開発するつもりがあることを先日発表したのも、その具体例と言えそうです。
7.人々の生活を変える
先述した通り、ウェラブルデバイスが健康やフィットネス分野のモニタリングに大きな役割を果たしてくれることは間違いありません。実際幾つかの研究が、人々の生活を改善してくれるであろうことを示唆しています。モルガンスタンレーの調査によれば、回答者のうち62%が、ウェアラブルデバイスのおかげで生活に大きな変化があった、または幾らかの変化があった、と答えています。
また、2013年に行われた別の研究でも、健康データをウェアラブルデバイスで取り続けた約3分の2の被験者が、健康を改善するのに役立ったと回答し、医者との積極的なコミュニケーションの促進や、病気や体調の向き合い方などに影響を与えたことが分かっています。
もしそうはならなかったら
アップルが、デザインからマーケティングに至るまで、他の企業以上にヒット製品を生産するスキルに長けているのは間違いありません。ですが、Apple Watchが成功を収めない可能性ももちろん有ります。例えば、2014年にサムスンはサムスンギアを発表しましたが、誰も去年がサムスンの年だったとは言わないでしょう。
アメリカでiPhone所有者を対象にした調査によれば、Apple Watchを購入したいという人間の割合は僅か5%に過ぎませんでした。もちろん見方によっては、iPhoneの顧客の5%はアメリカだけでも400万人ですから悪い数字ではないですし、2007年にiPhoneを初めて発売した時のように、売れ行きによっては価格を落としたりもしてくるでしょう。
モバイルデバイスは人々の生活に大きな変化を与えました。例えば、触ったり、学んだり、働いたり、歩きまわったりといった行為をとってみても、スマートフォン登場以前以後では、明らかに我々の動作の仕方は異なっています。とすれば、Apple Watchのような手首につけるタイプのコンピュータが更に我々の行動様式を大きく変化させてくることも十分にあり得る話なのです。何はともあれ、2015年がアップルにとって重要な一年となることは間違いなさそうです。
参照元:Quartz
執 筆:kihachi