スマートフォンを通し、音楽や動画をシェア出来る特許をアップルが取得しました。トラフィック面でアップルの負担を軽減するとともに、違法コンテンツの対策が狙いでは、とされています。
AirDropを通して脱中心化へ
特許の申請は2011年に行われていましたが、実際に特許を取得したのは今月初旬です。デジタル著作権管理に抵触しない形で、音楽やビデオ、画像などを、iPhoneやiPadのユーザー同士が直接シェア出来る仕組みです。
特許によれば、システムはAirDropを使用し、ライセンスを取得しているものであれば、iTunesからコンテンツのコピーをダウンロードしなくとも、簡単にデバイス間を移動させられるようです。
ほかにも、この特許では、コンテンツ・オーナーの帯域維持コスト削減がP2Pの利点として挙げられており、このことからニュースサイトのZDNetは、「最終的にはアップルが、自社が所有するさまざまなコンテンツを、自身のサーバーで一括管理しない方向に持っていくのでは」と分析しています。
違法コンテンツを駆逐できるのか
とはいえ、現在P2Pは、もっぱら違法コンテンツでの利用が主流です。またDRMを外すことは難しくもなく、アップルの提供するユーザー間ベースのファイル管理システムが、逆に違法ダウンロード利用者を活気づかせる恐れもあります。
特許には、「ユーザー同士のやりとりをスムーズにさせることで、認証済コンテンツを所有することに対する機会費用が低くなり、将来的には違法コンテンツのコピーやシェアが減少するだろう」と書かれています。
実際、Spotifyが登場した時にも、イギリスでは違法ダウンロード件数が1年間で3分の2に減少しましたし、かつて「iTunesで気軽に安く楽曲を購入できるならば、多くの人間は違法ダウンロードよりもiTunesを選ぶ」という調査もありました。
違法コンテンツと共存へ
しかし、2014年に日本でも使用可能となったiTunes Matchでは、年間3,980円(アメリカでは25ドル)を支払えば、たとえ違法コンテンツであろうと、同内容の正規コンテンツがiTunesStoreで販売されていれば、iTunes MatchにアップロードすることによってiTunesで販売されている正規コンテンツがダウンロード可能となり、自分が所有しているデバイスで共有し放題という、違法コンテンツの「ロンダリング」方法が話題となりました。
ロンダリングを結果的に追認していることは事実ですが、その一方で、たとえ違法コンテンツだろうと、ユーザーがiTunes Matchにコンテンツをアップロードしさえすれば、権利者に使用料が支払われる仕組みは、これまで違法コンテンツの蔓延によって苦しめられていた権利者を救ったとも言えます。
権利問題をどう解決していくのか
このようにiTunes Matchの事例をとってみても、コンテンツや権利に関するこれまでのプラットフォームを、アップルが自身の手で再構築しようとしていることが分かります。
今回の特許がiTunes Matchのように、違法コンテンツとうまく共存していくモデルになるのかは不明ですが、2011年第4四半期に7億2,900万ドル(約8,600億円)だったiTunesの収益が、2014年の同四半期には46億ドル(約5兆4,300億円)にまで増えていることを考えれば、今後もiTunesがアップルの事業において中核であり続けることは間違いなく、AirDropでのやりとりでも、iTunesを通して権利問題を解決していくであろうことが予想されます。
参照元:ZDNet、http://iphone-mania.jp/news-60295/
執 筆:kihachi