最近、MVNOによる「格安SIM」が注目を集めているとはいえ、日本では大手携帯キャリア3社の契約者が大半を占めています。そんなドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアのここ数年の歩みを分析しました。激動が予想される2015年、各社はどのような競争を繰り広げるのでしょうか。
「iモード」で世界の携帯電話サービスを変えたドコモ
NTTドコモは、1993年に旧日本電信電話から分社化されて発足しました。1999年2月に開始した「iモード」サービスが爆発的ヒットとなり、その後の国内外の携帯電話サービスに大きな影響を与えました。
2010年12月には国内キャリア3社のトップを切ってLTE通信「Xi」のサービスを開始したドコモは、2013年9月にはついにiPhoneの販売に参入し、国内大手キャリア3社がiPhoneを販売する構図が完成しました。
セット割で先行、個性的端末で話題をさらうau
「au」ブランドを展開するKDDIは、2000年に日本移動通信(IDO)とDDIセルラーが合併して発足し、2001年にはKDDIの携帯電話ブランド「au」を立ち上げました。iPhoneの販売には2011年、iPhone4sから参入しています。
固定回線とスマートフォンのセット割「スマートバリュー」で先行するほか、最近はAndroid搭載ガラケーのほか、マニアックな存在感を放つFirefox搭載スマホを発売するなど、個性的な端末でも話題となっています。
「予想外」な業界の風雲児、ソフトバンク
ソフトバンクは2006年、ボーダフォンを買収し、携帯電話事業に参入します。2007年1月には同社間での1時から21時の通話が無料となる「ホワイトプラン」の提供を開始し、2008年にはiPhone 3Gを日本国内で初めて発売し大きな話題となりました。
2012年にはイー・アクセスを買収し、2013年には米第3位のキャリア、スプリント・ネクステルを買収してアメリカでの携帯電話事業に乗り出すなど、以前よりおとなしくなったとはいえ、業界の風雲児としての存在感は健在です。
契約台数、ソフトバンクがiPhone4発売の2010年から急伸
各社の契約保有台数の推移を見比べると、ドコモとauがゆるやかに伸びているのに対し、ソフトバンクの伸びのペースが速いのが目立ちます。特に2010年から保有台数の伸びが加速しています。
2010年に発売されて大ヒットし、日本で本格的にiPhoneが普及するきっかけとなったiPhone4の販売が好調だったほか、頭打ちが見えてきた携帯電話市場を拡大すべく、同社が通信機能を持つ機器の販売に積極的だったことが大きいと考えられます。
各キャリアの「純増数」競争は2014年春で沈静化
各キャリアの純増数を比較すると、ここでもソフトバンクの動きが大きいのが目立ちます。2009年には125万台程度でしたが、2010年に急増し、350万台前後の純増数を3年連続でキープしています。似た傾向を示すのがauで、2011年から純増数が急激に増えています。これは、2011年にauがiPhone5でiPhone販売に参入した影響と見てよいでしょう。
しかし、各社の勢いを示すといえる純増数による競争は、過激なキャッシュバックによるMNP客の争奪戦を招き、総務省も問題視する事態となりました。2014年3月をもって業界団体であるTCAの月次発表が終了したのをきっかけに沈静化します。
ソフトバンク、海外企業の大型買収で時価総額9兆円超え
各社の企業としての価値を示す時価総額を見ると、ここでもソフトバンクの動きが大きいことが目立ちます。2012年に約3兆9,142億円だった時価総額が、2013年には一気に9兆円を超えています。
これは、アメリカ第3位の携帯キャリアであるスプリントをはじめ、海外企業の積極買収が直接的に影響しています。ソフトバンクは、スプリント買収の勢いに乗って第4位のT-モバイルの買収にも乗り出しましたが、結果的に断念しています。
売り上げ、営業利益ともソフトバンクが急伸
各社の売り上げは、ドコモ、au、ソフトバンクの順が2012年まで固定化していましたが、大型の海外買収で攻勢に出たソフトバンクが2013年に約6兆6667億円となり、ドコモとauを抜いて一躍トップに立っています。
営業利益では、ソフトバンクが2007年以降一貫して伸び続けており、ほぼ横ばいのドコモ、緩やかに伸びるauとは対照的な勢いを示しています。
競争の質が変化、各社が独自性をアピールへ
2015年は、「SIMロック」解除や、MVNO各社が提供する「格安スマホ」が普及しつつあるなど、競争環境はこれまでとは変わってきています。
進学や就職による最大の書き入れ時を前に、先行するauの「スマートバリュー」を追撃すべく「ドコモ光」、「SoftBank光」で固定回線とスマートフォンのセット割引による顧客の囲い込み競争が本格化しています。
また、顧客の流出を防ぐために、auが「アップグレードプログラム」で機種変更客を優遇したり、ソフトバンクは子会社スプリントの回線を活用した「アメリカ放題」や、海外リゾート地での利用料金を割引する「リゾート割」を打ち出すなど、単なる値引き競争から、各社の特色を活かしたキャンペーンが増えてきています。
2015年、大きく変化する市場で国内携帯各社がどんな競争を繰り広げるか、注目のニュースが続きそうです。
執 筆:hato